◆◆クラフト史・頼 空陀◆◆


    

   〜マルチプレーヤーのベーシスト“Kingo”〜 
     

         
 
 渋谷の明治通り沿いの小さなリハーサルスタジオで、あらたなベーシストのオーディションが行われた。
メンバー3人とマネージャーは、そこで初めて中川敏明が見つけて来た“濱田金吾”なる人物に会うのである。
濱田はその日までに、前もって渡されていたクラフトの曲のいくつかのベースパートを、すでに覚えて来ていた。
そして一緒に演奏したのである。さすがにメンバーも驚き、濱田に好印象を持ったようだ。

また歌も唄えるということの証明としてBeatlesの何かの曲を唄って聴かせたようだ。
数日後、濱田はコンサートツアーのための鉄道切符をもらい、ツアーへの参加が始まる。
後年,濱田はその時のことを、次のように語っている。
「オーディションは受けたものの、数日間なんの返事も無く、だめか?と思っていた所、
いきなりチケットが届き、明日、何時何分東京駅に集合!という知らせが来て、びっくりした。
その急な展開に少し違和感を感じた」。
今思えば、クラフトのスケジュールも差し迫ったものがあったのかも知れない。
あれよあれよ!と言う間に、まわりに押し流されて行ったような気分だったようだ。