◆◆クラフト史・頼 空陀◆◆ |
〜THE LAST SERENADE〜 | ||
古今東西、今も昔も、バンドというものには“解散”が付きものである。 ご多分に漏れずクラフトにもその時期がやって来ていた。 『解散の原因』について、人は勝手な憶測をし、とやかく物知り顔で話すのをよく耳にするが、 筆者は、この“解散”ということについては、あまり軽々しく語れるものではないように思う。 なぜなら、おのおの原因や理由があるであろうし、一概に、これだと言える答えはないからである。 当の本人たちにも明らかな原因はわからないことが多い。 それはバンドというものの成り立ち、個々の個性の集合体としての存在自体に最初から解散というものが内包されているような気がする。 小難しく考えるのはよそう。 単純にいえば、“出会いがあればいずれは別れがある”…そのような人生譚のようなものなのかも知れない。無常感といっても良い。 クラフトのメンバーが解散を決意した時、今まで支えてくれたファンの人たちにどうやって恩返しをしようか?とメンバー達は考えていた。 スタッフとも相談し、最後は“お祭り”のようにして、大きな花火を上げようじゃないか!!ということになり、 解散コンサートの模様を録音して、初の、そして最後のライブアルバムを作ろうということになった。 ここで特筆すべき点がある。ライブアルバム、しかも解散コンサートともなると、 だいたいそのアーティストの代表曲のオンパレード、ベスト盤的な選曲になりがちなのだが、クラフトの場合は違っていた。 この解散コンサートのためにメンバーは新たな曲を書き下ろしていた。 それは、今自分たちが目指す音楽はこれだという気概を見せるためにでもあった。 コンサート当日は、このライブアルバムのタイトル曲でもある『ラストセレナーデ』のインストヴァージョンが会場に流れる中、 コンサートの幕が切って落とされた。 第1部はクラフトと親交があったアーティスト達をゲストに迎え、 一緒に演奏したり、和気あいあいの中にステージが繰り広げられた。 ヒット曲『僕にまかせてください』の、盟友“さだまさし”との共演などなど、クラフトの歩んだ道を辿る構成になっていた。 第2部は、生ピアノに、旧友山田秀俊、ハモンドオルガンに小坂潔、 そして初めての試みであるブラスセクション(トランペットx2、トロンボーン)の3人を加えて 、新曲『Sing!Sing!』の厚みのあるサウンドで幕が開いた。 この日のクラフトの演奏は非常にエネルギッシュで、ライブバンドとしてのクラフトの面目躍如たる姿であった。 三井のギタープレイとヴォーカル、森谷のソフトな歌声、そして司会、 金吾の弾けるようなベースとハイトーンの声、そして松藤のパワフルなドラミング、各々がうまく溶け合い、作用し合って、 最後はこれもまたこの日のために作られた新曲『相棒』(森谷:詞、濱田:曲)『家路』(三井:詞曲)の演奏で、 その夜は極上のステージを作り上げたのである。 思えば、バンドとしての力量が頂点に達していた時期に行われた解散コンサートであったように思う。 三井の最後の挨拶の後、ゲスト全員をステージに招き入れ、 会場の観客とみんなで、テーマ曲『ラスト・セレナーデ』を大合唱しつつ、この解散コンサートの幕は降りて行った。 会場からはメンバーの名前を呼ぶ叫び声、涙、そしていつまでも鳴り止まぬ拍手…。 そしてここに、クラフトは5年間の活動に終止符を打ったのであった。 完 |
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